【データで読み解く】マルティン・ウーデゴール: プレイヤーダッシュボード

2021-01-28データ分析記事紹介

今季アーセナルで出色の活躍を見せているマルティン・ウーデゴールですが、その能力の高さは既に19/20シーズンのレアル・ソシエダ時代のデータに現れていました。

比較の条件

今季はレアルでウーデゴールはあまり出場機会を得られていないため、昨季のローン先のレアル・ソシエダでの成績を他のスペインリーグのウイング・MFと比較してみました。

出場時間が10×90分に満たない選手は除外してあります。また、いつもスタッツを利用するのにお世話になっているFBref.comでFW/MF、MF/FWなど、複数ポジション登録扱いになっている選手たちは、明らかにこの選手はストライカーだろ!という選手以外は含めてあります。

ボール前進

ソシエダではトップ下というよりももう少し低い位置でプレイすることも多かった影響で、ドリブルパスを問わず、ボール前進系のスタッツは総じて高いです。

特筆すべきは、単にボールを前に進められるだけではなく、90分当たりのペナルティエリアへの侵入パス数でラリーガのMFとしてはトップ、またFWを含めても、メッシに次ぐリーグ二位の数字を残していることでしょう。

同じボール前進でも、典型的なボランチのように低い位置からボールを持ちあがる、というよりも(例えば、アーセナルの選手で言うとジャカもセバージョスもボール前進距離自体はかなり良い数字を残している)、より高い位置でさらに相手にとって危険なエリアまでボールを進める、というプレイが得意な選手だという事がわかります。

そして、同じく目立っているのは、プログレッシブパスの多さです。

プログレッシブパスとは?

少し定義が難しいのですが、自陣40ヤードより前の所から、直近の6本のパスの最も前方の地点から計算して10ヤード以上ボールを前に進めるパスのこと。また、10ヤード以上前に進めなくとも、ペナルティエリアへ入るパスもカウントされる。

簡単に言えば、一本でチームの攻撃を大きく前に進めるパス、くらいに理解しておけばよいかも。

プログレッシブパスの中にペナルティエリアへのパスは既に含まれているのですが、ペナルティエリアのパス数は90分当たり2.5強なのに対して、プログレッシブパスは7.22なので、一試合当たり5本くらいは縦に大きく進めるミドル/ロングパスを決めている計算になります。

今のアーセナルを見ていても、トーマス・パーティの縦への意識は他の選手たちと比べて別格だな、と感じられますが、去年の数字ではパーティ以上に前へのパスを通していた選手、というのは期待が持てます。

得点とチャンス創出

プレイしていたポジションの影響もあるかもしれませんが、やはり31試合で4ゴールという数字の通り、そこまで得点力が高い、というわけではないようです。

一試合当たりのxGも悪いわけではありませんが、攻撃的MFとしては平均的、くらいの部類なので、そこまで数多くのチャンスに顔を出している、というわけでもなさそうです。

逆に言えば、今後成長して、得点も多くあげられるようであれば、ワールドクラスのMFにさらに一歩近づくといえるかもしれません。

一方で、アシスト期待値やキーパス(=シュートに繋がったパス、アシストは含まない)数などチャンス創出系のスタッツは既に非常に高い水準にあります。もちろん適応の問題を抱えている、というのはありますが、アーセナルの攻撃陣を考えるに、もしある程度出場機会を得て本領発揮できれば、アシストはかなり伸びるかもしれません。

キーパスの一つ手前まで遡るシュート創出アクション(SCA)もかなり高水準ですね。

SCA(シュート創出アクションとは?)

シュート直前のパスやドリブル、そしてその一つ手前のアクション2つがSCAとしてカウントされる。シュートを打った選手が自分自身へのSCAを記録することも出来る。また被ファウルもカウントされる。

例①
選手Aがドリブル突破→選手Bへパス→選手Bがシュート: 選手Aの2度のSCA(ドリブルの分とパスの分)

例②
選手Aが選手Bへパス→選手Bが選手Cへパス→選手Cがシュート: 選手AのSCA1、選手BのSCA1

例③
選手Aがドリブル突破→ファウルを良い位置でもらう→選手BがFKでシュート: 選手AのSCA2(ドリブルの分と被ファウルの分)

ドリブル

また、パスほど目立ちはしませんが、90分当たりのドリブル突破数も2.24と今回対象となっているMF/ウイングの選手中では18位にランクインしています。現マンチェスター・シティのフェラン・トーレスとまったく同じ数字ですね。

FW扱いなので今回の比較では対象外ですが、ドリブル突破数で圧倒的1位に立つメッシの成功率が66.8%、ウーデゴールの成功率が67%なのでほぼ同じくらいで、無謀な場面でもドリブルを仕掛けてボールロストを繰り返す、といったタイプでもなさそうです。

(リーグが違うので一概には言えないが、例えば今季のサカのドリブル突破成功率は55%、ペペは46%)

守備

一部で懸念だといわれている守備に関してもスタッツを見る限りはそこまで心配はいらなさそうです。

攻撃的MFやウイングのタックル数などを見てもあまり意味がない気がするので、90分当たりのプレス数をチェックしてみましょう。

フェキル: 20.4
久保建英: 19.1
ウーデゴール: 18.4
カソルラ: 17.5
ヤヌザイ: 13.4

チャンス創出系のスタッツで名前が出てきた選手たちとの比較だとこのような感じでしょうか。

こちらも統計的な意味は薄そうですが一応アーセナルの選手たちとも比べると、今季チームトップはエンケティアが20.6という数字をたたき出していますが、2位のマルティネッリが18.3とウーデゴールとほぼ同じ数字なので、ウーデゴールも決してプレスに走れない選手ではないでしょう。

プレス成功率も20%前半台で、特に高くも低くもありません。

おまけ

特に本筋とは関係ないんですが、今回スペインのアタッカーたちのスタッツをリサーチしていて、チャンス創出系のスタッツほぼ全ての項目でカソルラが上位に出てきたのと、他にもバネガ、デニス・スアレス、+ウーデゴールという、なんだかアーセナルファンとしては聞き覚えのある選手たちがみんな似たようなスタッツを残していたのがちょっと面白かったです。

スアレスはやっぱり適応できなかっただけで良い選手だったんですね。それくらい才能のある選手でもやはり時間が限られたローンというのは難しいようです。

スペインの二強で出場機会を得られず冬のローン、という似たような経緯でアーセナルにやってきたにもかかわらず、即座に適応して結果を残したウーデゴールのすさまじさが際立ちます。

Posted by 山中拓磨